散骨のメリット・デメリットを考えてみた
“故人の希望でお墓を作らず、海に散骨した”
けれど、、、
「海に向かって手を合わせるのは、どうしてもしっくりこない」
と感じる遺族もいらっしゃいます。
親は子供に迷惑をかけたくないから「お墓はいらない。供養なんてしなくていいよ」と仰られますが、子供はちゃんと供養したいという意識を持っていることもあります。供養するご家族の意向に配慮せず進めると、後々もめてしまう原因になります。
様々な供養方法
少子高齢化が進む現代では、後継者(墓守)がいないなどの維持管理の難しさから、供養の方法は様々な形が出来ました。
- 永代供養
他の人の遺骨と一緒に納骨される合祀型、個別に遺骨を管理、供養してくれるもの
屋内の永代供養施設に納骨する方法、屋外の納骨塔に納骨する方法 - 手元供養
故人の遺骨の一部または全部を自分の近くに置く方法
自宅に納骨する方法とペンダントや指輪など、加工して身に付ける方法 - 散骨
故人の希望された場所に粉末状にした遺骨を撒く供養方法
遠洋の海や地所有者の許可を得られる山などで散骨 - 樹木葬
墓石の代わりに樹木を墓標とし、木の周りに遺骨を埋葬して供養する方法
費用が抑えられ、明るく自由なイメージ
従来の墓石にこだわらず散骨を選ぶ人が増えています。この章では、墓じまいからその後の遺骨の供養について、様々なご相談を受けている、終活カウンセラーの私(ご縁道/淺野)が散骨のメリット・デメリットについて解説していきますね。
散骨とは
まず散骨とは、遺骨を粉末化して、海や山などに撒く供養方法です。
故人の遺骨は墓地に埋葬するのが一般的ですが、墓石の建立は費用が高いことや核家族化でお墓の承継が困難な世帯が増え、墓じまいの数は急増しています。墓じまいした後の遺骨の供養方法で、経済的にも、合理的な葬法としても散骨を選択される方が増えています。
散骨のメリット
散骨のメリットとして以下の2点があげられます。
お墓にかかる費用を抑えられる
散骨することで、新たにお墓の土地利用料や墓石の購入する費用がかかりません。
例えば、愛知県名古屋市の八事霊園の墓地使用料は、
最も安い区画の墓地使用料:170,100円(0.81m²) 管理料は年間1,700円
最も高い区画の墓地使用料:6,019,000円(31.68 m²) 管理料は年間11,000円
最も安いプランでも、区画の使用料に加え、墓石が80万円としても初期費用で100万円近くかかります。さらにお住まいが遠方なら、お墓参りの度に高い交通費と時間がかかります。※お墓の消費者全国実態調査(2021年)によれば、一般墓の平均購入額は約170万円。
また、すでにお墓がある場合、
- 戒名の彫刻費
- メンテナンスや修繕の費用
- 墓地への年間管理費
- お墓参りにかかる交通費と時間
- お坊さんによる読経 など
上記のようなお墓を維持するための費用は、お墓を維持し続ける限りかかってきますので、散骨を選択してお墓を持たないと費用はかなり抑えることが出来ます。
特別な許可や届け出が不要
散骨は個人で行うこともできます。その場合、特別な許可や届出が不要という点もメリットです。お墓を建てる際と比べてみましょう。まずは、お墓を建てる際に必要な書類です。
お墓を建てる際に必要な書類
- 工事届
墓石を建てるのに必要な届け出書類です。工事届は必ず必要というわけではありませんが、霊園によって提出を求められることが多いようです。墓石屋が代行して手続きすることもあります。 - 埋葬許可証
埋葬する際に必要となる書類です。埋葬許可証がないと遺骨を埋葬することができません。役所で発行してもらいますが、火葬に必要な火葬許可証を火葬場に提出して、火葬後に返却されたものがそのまま埋葬許可証として使われます。 - 墓地使用許可証
墓石工事と納骨に必要な書類です。霊園から、お墓を建てる人に対して発行される書類で、申し込みをして入金すると発行してもらえます。お墓を建てる人は、これを受け取ると使用権を獲得できます。
上記のように、行政の手続きを行って取得する書類が複数あります。
その点、散骨は特別な許可や届出が不要です。行政の手続きが困難な方にとってはメリットと言えるでしょう。ただし、散骨するにあたり、気を付けなければならない点がいくつかあります。散骨は、法に禁止される規定はありませんが、“節度ある範囲をもって行う”という曖昧な解釈のもと行われています。知らないまま散骨を行うと死体遺棄罪になる場合があるので、注意が必要です。
詳しくはこちらの記事に書きましたので、一読ください。
“節度ある範囲”を守るには、散骨業者に依頼するのが安心で安全です。依頼するに時に、粉骨業者や散骨業者に対して、火葬場が発行する「埋火葬許可証」の提示が必要なので、大切に保管しておきましょう。
散骨のデメリット
散骨におけるデメリットは以下の3点があげられます。
周囲の理解が得られにくい
冒頭でご紹介した例のように、散骨をする際は親族の了承を得る必要があります。新しい供養の方法なので、親族(特に高齢)から理解を得られない場合があります。
お参りする固有の場所がない
こちらも冒頭でご紹介した例ですが、散骨をすると、固有の場所に墓標を設けることができません。お墓参りをして故人を偲ぶことに慣れている人にとっては、精神的、心理的な満足がしにくいかもしれません。故人を思い出した時や、辛いことが起きた時、嬉しい報告がある時、人は自然に手を合わせて拝みたくなるものです。それが、故人とかかわりの強いことなら、尚更かもしれませんね。
個人でできそうでできない
前章にも書きましたが、散骨は、法に禁止される規定はありませんが、“節度ある範囲をもって行う”という曖昧な解釈のもと行われています。知らないまま散骨を行うと死体遺棄罪になる場合があるので注意が必要です。
散骨の条件を満たした場所は、港湾、海水浴可能地域、漁場は不可ですし、沖も大型船通行海域や陸の見えないところでとなると、素人には可否の判断が難しいです。
デメリットの解決策
では、これらのデメリットはどのように解決することができるでしょうか。
故人の遺志として文面に残しておく
散骨を希望した場合、あらかじめ散骨を行う意思を親族などに伝え、了承を得ましょう。 もし故人の意思であるのなら、文面(エンディングノートや遺書)に残しておくとよいです。故人の意志であることが分かれば、理解を得やすくなります。
散骨する遺骨を分骨する
手を合わせる場所がないことを不満に感じる、または後々、後悔するかもしれないという心配がある場合は、分骨をおすすめしています。一部を故人の希望通り散骨して、一部は分骨用ペンダントや小瓶、手元供養で故人を偲ぶことが出来る環境を作ると弔うことができます。手元供養用のペンダントや小瓶をオプションでよいうしてくれる業者もありますよ。
例:楽天「遺骨ペンダント」https://search.rakuten.co.jp/search/mall/%E9%81%BA%E9%AA%A8%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%B3%E3%83%88/
散骨証明書をもとにメモリアルクルージングに参加する
散骨業者によっては、散骨した場所を散骨証明書という形で残してくれます。緯度経度が書かれていますので、故人が眠る場所がピンポイントで把握することが出来ます。また、メモリアルクルージングと言って、散骨証明書の場所に連れて行ってくれるツアーも行っています。墓石のように「固有の場所に墓標」とまではいきませんが、散骨した場所に行くことで、気持ちが安らぐと思います。このようなサービスを行っているかを散骨業者を選ぶポイントにするとよいですね。
以上のように散骨によるデメリットも準備次第で解決することができます。 散骨を計画する際に問題を感じたら、お気軽にご相談ください。希望通りの散骨ができるよう考えていきましょう。
まとめ
散骨は、専門の業者に依頼するのが一般的です。専門の業者に任せ、安心して気持ちを落ち着かせた上で、散骨を行うとよいですね。
変わり続ける様々な供養の方法は、どれも、メリット・デメリットがあります。それに、すでに確立されているその人の価値観や文化を変えるのは非常に難しいですよね。最期を迎えるに当たって、無理にお互いの理想を押しつけ合って関係が悪くなるのは、悲しいことです。夫婦間や親子、親類との間で、事前によく話し合うことが大切です。
墓じまいや散骨について、普段から様々なご相談を受けております。悩まれた際は、お気軽にご相談くださいね。